漫画家やイラストレーターら現代の“絵師”の作品を集めた「絵師100人展 10」(産経新聞社主催)が8月8日から、東京都千代田区のアキバ・スクエアで開かれる。節目となる10回目のテーマは「和」。和風、調和、平和…。新型コロナウイルス禍で世界が揺れ動く今、絵師たちは「和」の一字からどのような世界を紡ぎ出したのだろうか。
初めての夏開催となる今回は漫画家の蒼樹(あおき)うめさんら102人が参加。ポップカルチャーの最前線で活躍する気鋭に加え、台湾や韓国など国外の絵師も参加する。和といえばやはり和風のイメージが強い。同展でも伝統的意匠や和服をモチーフにした作品が並ぶ。
「華の誘(いざな)い」は人気バーチャルユーチューバー「キズナアイ」のキャラクターデザインを手掛けた森倉円さんの作品だ。今時の絵柄で描かれた少女が身に着けるのは、花柄の赤い着物に生け花のような髪飾り。背景には円窓(まるまど)と千代紙で折られた蝶…と、伝統的な日本と現代の日本が一枚の絵で見事に調和している。
今回が2回目の参加となる森倉さん。コメントで「『和』の持つ吸い込まれるような魅力を表現するために、黒髪を流水文(りゅうすいもん)に見立てて優雅で上品な感じを演出しました」と狙いを明かす。「蝶が花に惹かれるような、華やかな『和』の雰囲気を感じてもらえたら」
森倉作品と好対照なのがLAMさんの「錦鯉(にしきごい)」。3匹の錦鯉から感じるのは美しさと力強さ。それに加え、少女の妖しげな表情も心に残る。赤という色自体が持つ鮮烈さも改めて思い出させてくれる作品だ。
一方、調和や平和をテーマにしたというのが、青色を基調とした藤ちょこさんの「Station」。舞台は近未来を想像させる駅。スーツケース片手に旅立つ少女を見ると、こちらの心も弾んでくるようだ。コロナ禍で国境どころか県境を越えるのもはばかられる現在、少女の笑顔がひと際まぶしく映る。
時代は移り変わっても、「和」の心を求める人々の気持ちは変わらない。長雨や暑さで心がすさみがちな今、現代の絵師たちが手掛けた作品を見て心を和らげてみるのはいかがだろうか。
筆者:本間英士(産経新聞)
◇
8月8日から16日まで(期間中無休)。午前10時~午後8時。高校生以上1200円、中学生以下無料。コロナ対策で来場時のマスク着用などが必要。問い合わせは公式サイトの問い合わせページから。